石を積んだのは誰?

炉穴の中の積み石

いやはや、昨夜の上原彩子の紹介番組、凄かった。
プロコフィエフ作品の録音風景。「ロメオとジュリエット」からの有名な数曲や*1、ピアノ・ソナタ第7番変ロ長調「戦争ソナタ」の攻撃的な一節など、其の余りに神懸かり的な演奏風景から、普段は相当気難しく偏屈な性格なのだらうかしらむ?と怪しむほど。でも日常の様子は新婚三年目のフツーの若妻だったけどね。
確かに、2002年のチャイコフスキーコンクール第一位入賞は衝撃的な出来事だったが、アーティキュレーションの正確さやタッチの力強さばかりを見てしまつた為、当時はアルゲリッチ系統の演奏者なのだらうと勝手に誤解してゐた。実はさに非ず、全身没入型の所謂巫女霊媒体質の神秘的な演奏者だったのだ。アビーロード・スタジオの中の空気をも凍り付かせるほどの存在感と感応力。曲の世界に深く深く潜行(沈降?)して行く演奏スタイル。没入すればするほど、右肩が鍵盤の高さ近くまで下がり上半身が激しく傾く様子。*2何度も何度もの助走の結果、突如訪れる臨界点を越えた瞬間に開始される凄まじい演奏。そして、空中を漂ふ虚ろで官能的な目の表情。どの点一つを取っても、まったくスキャンダラスな存在だ。

*1:ソフトバンクのTVCMで一躍有名になった例の曲。ピアノ版がはじめから存在したのかは知らんが、「展覧会の絵」的な曲の雰囲気も生じて、一度全曲をピアノ版で聴いてみたいなと思ふ。

*2:神懸かって昇天していくタイプのピアニストも居るが、彼女の場合は降りていく(潜って行く)タイプだ。