諸風情

碧螺春茶葉の変容 on 馬の目皿

寒い寒い朝で、一晩中唸り続けた暴風もまだまだ続いてゐる。
今朝はちょこっと遅くまで眠り続けてゐたのだが、寝ぼけ眼で外に出てみるとはてな、陋屋の何カ所かで朽ち果てて打ち付けられてゐた雨戸の数枚が強風によって吹き飛び、近くの屋敷林の中に倒れてゐるではないか。中には近くに其の姿さへ見られないものもあって、其の行方こそ覇拿里荘における七不思議の一つであり、永遠の謎でもあるのだ。
(-_-)?
       
昨夜あたりからやうやう、今年の欧州訪問時の膨大な画像整理や、数百枚のプリントの分類などを本格的に開始。今回は確信犯的に建築物を中心に撮り続けたこともあって、分類作業は恰も建築雑誌の編集工作に似たり。また、歴史的耶蘇大聖堂の分類はロマネスクからゴシックへの建築学的編年工作に似たり。
欧州の石造建築物を見て呆れることと言へば、ただ切り石のみをひたすらよくもよくもここまで積み上げたりけるぞよとの感慨であって、日々大地の頻りに揺れたりける島国の住人様はただただ驚くばかり哉。
(―_―)
     
このやうな室内工作活動に没頭する我輩の脇に、朝、火など急ぎ起こした火鉢が置かれてゐることは言ふまでもないが、今天は五徳を構へ鉄瓶をかけ、ちんちんとお湯など沸かしてみた。ただ室内に水蒸気を供給するのみでは勿体ないと、鉄瓶の湯でお茶を淹れるもまたをかし。茶葉は台湾で密かに購入してきた碧螺春であって、二級茶葉とは雖も其の香りはどこまでも高く甘く、蘭の花の片鱗と言ふべきか馥郁とした果物の瑞々しさをかぐやうな春の心持ちせる。
飲茶ののち、覗き見たりける茶壺内いっぱいにぼわぼわと膨れた茶葉の其の大きさを、わざわざ馬の目皿に広げては、淹れる前の茶葉の大きさと並べ比べたりけるもまたをかし。二級茶葉とは雖も、一芯二葉の所謂ペコーがもりもりと、頗る盛大に開花せる状態を見るに付け、頼もしきこと泰山の如し。
(-_-)
         
更には、同時に複数多種のものごとを処理してゐないと個々の事象に集中できない悲しき性故、整理工作のまにまに音楽制作軟件などを開き、新たなリズムセクションを重ねて組んでみたりする。以前の作品もちょっとサイケにコンポーズし直して、そろそろmuzieなどに上載してみやうかな。プログレッシブ・テクノなる分野の開拓はまだ始まったばかり・・・
(–_–;)
       
今夜のお楽しみは、Das Neujahrskonzert der Wiener Philharmoniker=ウィーンフィルニューイヤーコンサート2008 ◇「ウィーン・フィルニューイヤーコンサート」の模様を生放送する。元日恒例のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による世界最大のクラシック音楽の祭典。日本人にもおなじみのメロディーが満載のワルツやポルカが楽しめる。指揮者のジョルジュ・プレートルは、世界中の歌劇場やコンサートホールで指揮をした経験を持つ。その中でも特にウィーン・フィルと結び付きが強く、地元での人気も高い。今回は演奏に合わせて、アルベルティーナ美術館やカールス教会前広場などウィーンの名所でバレエのパフォーマンスが披露される。◇
さう、今年83歳のプレートルおじさんの指揮で、マーラーの第1交響曲を巴里で聴いたのが10/23のこと。オペラ・バスティーユは超満員で、地の果ての天井桟敷からも此の指揮者の風格や、偉大さが手に取るやうによくわかったことを思ひ出す。ゲストの黒柳徹子が言ふ通り、真面目な表情は寧ろ恐ろしい感じを受ける巨匠だが、いったん微笑むと実に森羅を包み込むやうな暖かさをもった人格だ。指揮振りも時に激しく、時に指揮棒の先のみが微動するやうに変化に富んだものであり、聴衆を釘付けにする魅力がある。単に年の功だけでは醸成できない何かを持った、やはり巨匠なのだなあと改めて思ふ。それに、フランス人らしからぬ?ユーモアも持ってゐて、実に憎めないキャラクターだし。
今年の「美しく青きドナウ」のバレエは別会場ではなく、演奏会場であるウィーン楽友協会大ホール(黄金のホール)の客席までも使っての演出。聴衆も驚いてゐた様子だったが、プレートルは赤い薔薇を受け取れなかった?
巴里のコンサートではぎょうさんの聴衆が立ち上がっての大拍手が、延々10分近く続くてうありさま。聴衆の多くはアンコールを望んでゐたのだらうが、プレートルおじさんは客席の方を向き腕時計を指差すやうな仕草を見せ、「まう時間が無いんだよ」と言ふ劇中劇のやうな状況を演出して舞台袖に消へて行ったのであった。年齢を考へてみれば、マーラーの前には既にシューベルトの第2交響曲を指揮してゐるワケで、この上更にアンコールを期待する方が野暮だし、そもそもマーラーの余りの迫力と完成度に、此の満足感を以てコンサートを聴き終へた方がどれほど素晴らしいか、聴衆もよくわかってゐたのだらうね。おじさんを讃へる暖かさを内包した拍手で、巨匠を見送ったのでありました。(2007/10/23参照)
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ニューイヤー・コンサート2008

ニューイヤー・コンサート2008