電飾病

げに恐ろしきは・・・

この頃の季節、忌むべきは所謂「電飾住宅」*1であることは言ふまでもない。
我輩の集落内にも数軒、この手の分野で生き甲斐を発見してしまったのか、年々歳々電飾度がエスカレートしていく家が2軒有って、数年にわたる詳細な観察の結果、その発展変容過程は極めてパターン化されてゐることが判明した。両者ともこのやうに目を覆ひたくなるほど品のなさに拍車がかかりはじめたのが5年ほど前のことだが、両者共それぞれがそれなりに過激で過剰で過分な装飾過多状態に至る過程はほぼ同時であり、お互ひ親戚関係か友人関係があるのかしらむと怪しむほど。
装飾学的に分析分類すればそれなりに面白いのかもしれないが、いずれの場合も隙間を嫌ひ、不気味で不可思議で時に激しく無意味なオブジェを多用するあたりは、バロック的であるとも言へるかもしれない。ちなみにバロックとは「歪んだ真珠」てう意味らしいですが・・・
さて、今年にいたっては、東の横綱家ではなかなかの広さがある日本庭園のほぼ全面、門かぶりの松から池の中島、庭をぐるりと取り囲むイヌマキの生け垣にまで隙間無く電飾がはびこらせてあって、夜中に横を車で通りかかって急ブレーキを踏んでしまったほど。ついでによくよく覗き見てみると、庭の至る所に電飾シカのオブジェ(シカも電動仕掛けで首を振ってゐるのだ!トナカイかもしれないが、不気味さに変はりは無い)が配置され、サンタにいたっては庭だの縁側だの屋根の上まで何匹も?ひっついてゐる。聞けば近所では「おらがムラのディズニーランド」と呼ばれてゐるそうなげなで、夜泣きの激しいコビトも此処に連れてくればピタリと泣きやむだの、隣村からわざわざヒトが見に来るだの、夜店は出るわ提灯行列は出るわそれはそれは恐ろしい状況になってゐたのだ。
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青色発光ダイオードの量産が開始されて価格が下がったためか、特許裁判が一段落したせいかは知らねども、今年は青色の電飾が流行ってゐるらしく、この家でも早速多用されてゐたが、そもそもこの鄙の地に於いて、安売りの青色電飾を中途半端な長さだけ買ってきて木に巻き付けたり軒下に吊してみたりすれば、タダでさへ木枯らし吹いて暗く寒い田舎の夜が更に寒々しく見ゑること請け合ひだ。*2当の本人様たちはいったいどのやうな神経で飾り付けをなさってみへるのかは不明だが、兎に角慎ましやかにささやかに、そして何より日本的な景観をぶち壊すことなき節度を以て電飾世界を創造していただきたいものだと切に願ふ今日この頃で御座ゐました。
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*1:「浮かれ電飾」とは言ひ得て妙である。「いかれ電飾」と呼ぶべき家もあるぞ。

*2:今年の巴里のシャンゼリゼ大通りの電飾も、青と白の冷たい感じのするものだった。此の時期夜中にあの通りをそぞろ歩くためには相当の防寒対策をしておかねばならんが、通りに仰山あるカフェやいろいろな店に飛び込んでしまへばそこはぬくぬくのショファージ世界だから、電飾が寒々しくたって平気の平左なのだ。それにしても西洋人の不可思議さで、室内は時に書物の文字を読むにも難しいほどの間接照明で統一されてゐるにもかかわらず、屋外の電飾はかなり直接的で大胆で煌びやかだ。内と外に対する意識の差なのか、単なる習慣なのかは不明だが、ちょっと不思議に思ふなり。