故宮與十三行

十三行博物館内部

新装成った故宮博物院へ。
どこもかしこもピカピカで、展示方法も斬新なものがあるが、何か空虚なものが漂ふ。さう、此処には「系統」が無いのだ。大陸から運び出された無数の文物は、個々の価値は無限大でらうが、博物館総体としての有様は寧ろ脆弱である。それでも、以前には無かった紅山文化の玉器や、銅車馬の復元された出土状況、更には朱熹の揮毫などは興味津々。当然、ミュージアムショップも品数は以前と比較にならないほど増殖したが、残念乍ら著名な西洋人デザイナーを採用して創造したメインキャラクターに魅力が無く、所謂土着的なお土産然としたものどもの存在感には及ばない。こまごましたものをいくつか購入したが、精緻な印刷の図録などは高価だし、何より重いので諦めた。
都合3時間余りを過ごし、MRT淡水線終点の淡水へ。さうか、今天礼拝6てうことは土曜日だったのだね。余りの人出に圧倒されて、商店街で少し飲み食ひして、紅毛城などへの到達は諦めて退散。渡し舟で対岸に渡る計画も変更し、再びMRTに戻る頃には雷鳴と電光。雷雲がかなり低く、淡水川河口で雷鳴の反響が増幅されて、物凄い迫力。そのうち土砂降りになりにけり。
今度は対岸方面へバスで渡るべく、MRTでいくつか戻らむと乗ってみると、隣の若い女性が熱心に日本語学習の参考書を読み込んでゐる。話しかけてみると、大学で日本語専攻してゐるとのこと。今天は夕方から日本人の友達が来て、一緒に「銀杏ボーイズ」なるロックバンドのコンサートに一緒に行くのだてう。会話は殆ど問題ないが、読み書きがまだまだと謙遜なさる。ほんの10分余りの楽しい会話で御座ゐました。
さて、目指す関渡站に着いたもののまだ土砂降り止まず、駅構内で15分ほどぼんやりと遣り過ごす。目指す博物館行きのバスも1本見送り、更に10分ほどした後のバスに乗る頃にはやうやう雷雨も収まりかけてきた。十三行博物館は淡水川河口左岸にあって、鉄器を伴ふ先住民文化遺跡。汚水処理場の建設時に発見されたのだが、砂丘の下に集落が眠っておったのだ。
奇抜な建築物だが展示内容は極めて充実しており、先の台東の卑南文化公園といひ、台湾の各種博物館の実力を見直す。見終わる頃には雨も上がったが、涼しくなるより寧ろ蒸し暑さが増し、外に出ると息が詰まるほど。やってきたバスはこれまた冷房が超強力で、今度は息が白くなるほど。大陸ほどではないが、やはりなかなか「中庸」は無いのだらうか・・・
今宵のドミトリーは4名様で満員御礼。昨夜は台北駅周辺のラブホテル兼用の旅館で宿泊したものの、隣の部屋からのさまざまな音はさておき、ゴキブリが何匹か出ることに閉口して退散してきたニヒルな若者(台湾と香港・マカオを1週間かけて回る)と、殆ど無口なおじさん、それと侍学生の4名。このほかにも、東南アジア周辺の旅行が長さうな3人様も居て、夕方からはテレビの前でビール飲み乍らサッカーに大興奮してゐる様子。
我輩は何故かゑひもせず、ベッドでヒンドゥー教の本など読んでゐる。是も亦、台北の夜の一コマ。