中規模観光日

大丈夫って、何が?

宿の裏手の日本時代の民家の横にはモスバーガーが御座ゐまして、ふらふらと朝に立ち寄りましたところ、マクドナルドの如く朝食特別メニューが用意されてゐるのでありまして、価格はどれも50元前後。モスの普通のメニューにあるハンバーガーが1個70元だの80元*1だのすることを考へるまでもなく、大変経済的=お値打ちになってゐるのでありまして、今朝は火腿鶏蛋三明治即ちハムエッグサンドイッチのセットにしたのでありました。55元で飲み物付き。冷房の程よく効いた店内2F窓際に陣取り、成功路眺め乍らの朝食もなかなかよいではないか。
店内は5割がたの入りで、面白いのが老人組が方々に5人8人と集まって朝食など喰ってゐること。耳を欹ててみれば、或る集団の会話における日本語の混合率は3割近くと非常に高く、文章そのものが全て日本語になったものと、単語または文節が日本語化して混在したものの二種類が有る。恐らく小学中学あたりを日本語教育下で過ごした人々だらうが、言語現象としては興味深い状況だ。
ちなみに若者対象のテレビ番組でも、日本語の出現率は予想以上にあって、主に感嘆詞。次に固有名詞や人名と、単語など。彼らは会話が出来るワケではないが、さまざまな様相と形態で溢れる日語現象の影響を全身で受けてゐることは確かだ。
例へば、今朝のモスの服務員小姐。我輩が日本人とわかると、100元札を出したお釣りを手渡すとき、「ハイ、よんじゅうごえんです」などと言ふ。後ろに客が居なかったので、ついでに少し会話。日本のモスには朝食メニューなどは没有なので御座ゐますよなどと教へてやると、「真的!?(ホントー)」などと言って驚き、厨房の皆に伝へてゐる。すると厨房の3人も皆驚いてゐるてう可愛らしさ&微笑ましさ。
さて、優雅な朝食後は、台南西部の安平地区へ。火車站の円環で30分に1本しか来ない2路の市内バスを待ってゐると、隣にやってきたおばあさん二人、大声での世間話開始。先のモスでの老人達と同じく、今度は会話の半分近くが日本語。しかもお一人はその日本語の発音が余りにも日本人そのものであって、思はず耳を欹ててしまった。「さうよね、さうおもって間違ひないわよね」「それは違ふわね、違ふわよ」等等、会話の途切れた隙間に語りかけて見ると、忽ち全て日本語になって楽しく会話はずむ。「でもねーよりによってこんなに暑い時に、あなたよく来ましたね、台湾まで。今も話してたのよ、こんなに暑いんだからしんでしまひさうだって・・・」「さうですね、暑いけど楽しいですよ」
「楽しい旅行はいいはね、それはね、じゃーね」
             
安平までは20分ほどで到着。臨海部の古老街で、其の中心は1627年に荷蘭人の築いた要塞である安平古堡。当初はゼーランジャ城と呼ばれ、矩形の角が槍先のやうに突出した欧州特有の要塞形態だった。先の赤嵌城同様、鄭成功政権下に接収され其の後は廃墟になってゐたものを、日本時代に改修整備し、基壇の上に会堂を建設。現在は修復されて資料展示館とミュージアムショップに。展望楼はいつの時代のもの? 国旗掲揚台は見るからに日本時代のもの。
安平開台天后宮:大規模な女馬祖廟で、組み天井の彫刻群密度が尋常ではなく素晴らしい。イスラム風の極地である、アルハンブラ宮殿の天井装飾を一瞬思ひ出すほど。
台湾開拓史料蝋像館:嘗ての英国商館である徳記洋行の建物を利用した資料館で、開拓の歴史が蝋人形で再現されてゐる。隣は「樹屋」で、かつての塩倉庫? 廃墟になってゐたものをそのまま、つまりガジュマルの樹根で支配された様子そのままを整備して見せてゐる。屋根越しに見下ろせるやうな空中散策路もあって、コビトたちが狂ったやうに走り回ったり、なぜか凧を揚げて遊んでゐる。
運河博物館:高雄の愛河同様、此処も日本人が整備した運河らしく、端の脇に小さな資料館あって運河史のビデオなど見せてくれる。担当の女性(ボランティア?)はしばらく新宿の歌舞伎町に住んで居たとのことで、角ばった日本語喋る。風貌は風俗嬢のやうだったが、そんなことは聞けんもんでいろいろ世間話したが、日本のケーキが美味しくて美味しくて、日本に居るとどんどん太るから日本は嫌いとのことでしたが、なにか?
夕方早めに宿に戻るも、今回の旅で初めて、夕立の気配。南方に灰色雲の壁立って、文字通り曇りの御陰様で西日が遮られて幾分涼しい。雷鳴と電光、そして小雨。熱された舗装道路の表面は、ちょっとやそっとの雨では冷ゑることなどなからうが、何処となく埃っぽくも雨の匂ひ。
いつものやうに、大いに溜まった資料や票や地図や書籍の類を一纏めにし、駅前の郵便局から小包として発送。総重量3キロ強、水陸運即ち船便で490元也。
成功路で発見した網巴ことインターネットカフェことゲームセンターで上網。やはり飲み物30元前後頼むと1時間15元で、飲み物注文しない人は1時間20元。
大陸でも同様だったが、殆どの若者が熱狂してゐるのはネットゲーム。そして一部の人が熱中してゐるのが、セカンドライフみたいな仮想現実ディスコ?? 実に奇妙なテクノ音楽がかかる空間で、会話したりひたすら踊りまくって周囲の人々から拍手貰ったりしてゐる様子。
不思議に空虚な時間に満ちた空間。
明天は台中へ向かふ予定。さて、高速汽車にしやうか火車にしやうか。
其の前に先づは担仔麺でも・・・
       
晩安 

*1:現在1台湾ドルが3.8円くらいか