トラキア的

縁起物宇宙の混沌秩序

ブルハン・オチャルは名高きジプシー音楽家
The Trakya All Stars featuring SMADJ によるアルバム、TRAKYA DANCE PARTY は濃厚なトルコ風情が堪能出来る作品だ。トラキアとはトルコ北西部の地方名であり、トレースとも言ふ。其の一地方都市であるクルクラレリが彼の生まれ故郷とのことだが、北は黒海に、西はブルガリアに接した幾分ナーバスな地域だ。我輩も且つてブルガリア方面から越境し、エディルネを経てイスタンブールに至る国道を通ったことがあるが、混沌と喧噪の大都市を間近に控ゑた地方にしては余りにも閑散荒涼とした雰囲気だったことを思ひ出す。
解説に因れば、彼の両親はバルカン半島を放浪した後にクルクラレリに漂着した由緒正しい?ジプシーであり、ブルハン自身は24歳の時にスイスのチューリッヒに移住。トルコ伝統音楽とジプシー音楽、更にはジャズやフュージョンなどとの融合を試み、かなり実験的な領域にも挑戦し続けて来た人物だ。実際、ジョー・ザヴィヌルやエリオット・フィスクらと競演したてう経歴が紹介されてゐるが、それらの音源には接した事が無いので、探してみやう。

トラキア・ダンス・パーティ

トラキア・ダンス・パーティ

見るだに怪しげなジャケットだが、トルコにはこんなムスターシュを生やしたオヤジが伍萬とゐるので、心配する必要は無い。また、トルコや中東、更には新彊辺りにはこの手の怪しげな魅力を放出するジャケットが仰山店頭に並んでゐるので、何ら不思議なことではない。しかし、我々にしてみれば無限に怪しげで、魅力的なのだ。
ブルハンを筆頭に、分り易いパースペクティブで居並ぶのが「ザ・トラキア・オールスターズ」だらう。手に手に民族楽器やブラス楽器を持ってゐるし、当たり前のやうに怪しいヒゲオヤジが何人も居る。実際のサウンドは、ベリーダンスにも十分使へさうなテンポと展開の曲が多いが、時折妙な電子音がフィル・インしたりダブされたりと、実にエキゾチックだ。
此の辺りはだうやら SMADJ ことジャン=ピエール・スマッジャ(チュニジア生まれで巴里在住)のミキシングによる仕業のやうで、彼のマグレブ的感覚がアラブ風味を介して極めて上手く作用した結果の作品のやうだ。
兎に角、爽やかな初夏の空気(まんだちょこっと黄砂を含んだ)に相応しい?、ダンサブルでエキゾチックでオシャレなアルバムだ。
(−_−)♪