秘園

美味しさうでせう!?

とある筋より入手した秘密情報に基づき、或る洋菓子屋を目指す。
当地は大都会近郊にしては田舎風情の中途半端な市街地がだらだら続く地域だが、妙なことに私鉄駅前の商店街に仏蘭西人のパン焼き職人がBoulanger=ブーランジェを出してゐたり、斯界では有名な爺さんが今時珍しい長屋の奥で仏像を彫ってゐたりする。
元来職人などてうものは無名氏であることが前提の存在であり、近年の如く豆腐屋のオヤジやら洋食屋のシェフが恰も芸術家の如くもてはやされて威張ってゐることなどは全くの間違ひなのである。
さておき、いつもは自行車で徘徊する街道筋にその店は在った。用事ついでに自動車ででかけた為、ローカル単線の踏切近くのちょっと奥まったロケーションが発見出来ず、初めは通り過ぎてしまった。気付ひて引き返してみると、店の前駐車スペースに先客1台(パッソ)が停まっており、如何にも「私は毎週末ここでシュークリームを買ってるのよ」てう感じのお嬢様2人組が品定めをしてゐる。我輩も店頭を一瞥し、メインのシュークリームが注文に応じてその場で中身を詰め込む式の販売方法であることを瞬時に察し、ローストアマンドの鏤められたシュー(パリジャン)にキャラメル風味のカスタードと、スタンダードなバニラカスタード、それと普通のシュー(シューケット)に詰め込まれる3種混合を注文。何やらぐったりした赤子を背負った小柄な女性店員が如何にも手際悪さうに箱に詰め込んでくれたが、店頭ケースのすぐ奥が仕切りも無くそのまま厨房になっており、パティシエのやうな男性がてきぱきとクリームを詰めたりシューを焼いたりしてゐる。
1個200円が高いか安いかはさておき、それはそれは上品で控ゑめな味。アマンドシューの焼き上がりが多少ディープ過ぎたり、カスタードのバニラ風味が多少物足りなかったりするものの、先づは合格水準にて、次回はケースに並んでゐたレアチーズケーキや、ピラミッド型のチョコケーキも試してみますか。
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パティシエのフランス語

パティシエのフランス語

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Dreamcatcher