時文流

緑天上

学生の頃買った一群の古書を整理してゐたら、昭和13年の語学教科書『最新支那時文』が出てきた。勿論戦時下のものであり、内容に用ひられた例文はそのやうな状況を色濃く反映したもの、てうか状況そのものを現したものであった。冒頭に掲げられた「凡例」に曰く、
 
 一、本書ハ初メテ支那時文ヲ学習スル者ノタメニ編集シタモノデアル。中等諸学校デ之ヲ用ヒル場合ニハ、全巻ヲ適宜ニ区分シテ、三箇年乃至五箇年間ニ教授セラルベキデアル。
 一、支那ニ於テ時文ト謂ツタモノハ、清朝以前科挙(文官登庸試験)ニ用ヒラレタ文体ノ一種デアルガ、我ガ国デハ現代実用ノ漢文をヲ支那時文ト呼ンデ居ル。従ツテ白話文(口語文体)ハ此ノ中ニ含マレナイ。勿論支那時文ハ満洲国ニモ通用スル。(後略、以下は例文)
 第四 雑件 - 十八 自覚
中国受外侵之最大第一幕、要算鴉片戦役、英・法聯軍占広東破北京清帝避於熱河政府幾至瓦解、全国等於淪亡此後瓜分共管之論、遂盛倡於欧西、而中国人今日竟忘却中国患先河之主角、不在東而在西、此歴史上善忘之病体、吾人允有糾正之必要者也。
 十九 満洲国国歌
天地内有了新満洲 新満洲便是新天地 頂天立地無苦無憂 造成我国家
只有親愛並無怨仇 人民三千萬人民三千萬 縦加十倍也得自由 重仁義尚礼譲
使我身修 家已斉国已治 此外何求 近之則與世界同化 遠之則與天地同流
 第十 宣言 中華民国臨時政府宣言
国民党抱幼稚虚驕之疾、醸成国破家亡之禍、本政府已一再厳詞声討、為国人所共喩、時至今日、無待煩言、惟最不可恕者、厥為焦土政策、江南膏腴盡成瓦礫、山左文物悉変丘墟、襄者党軍在済南霄遁、決河堤数十處、今隴海線又以決堤聞矣、為禍之烈什百於前推其用心 ・・・・
 
定価は46銭、東京市小石川区小日向水道町の(株)東京開成館発行。学生達はこれらの例文を日本語式に読み下して、「支那時文」を学習してゐたのだね。(-_-)
偽満帝国=満州国に関しては実際3回に亘って踏査し、各地に残る建築物を巡礼した。その多くが帝冠様式や民族様式を前面に強調した建築物であり、堂々かつ実用性もよく考慮されたものであった。建築が政治と一体化して、設計=デザインを介して思想を誇示してゐた時代なのだ。現代建築にこの種の魅力や主義主張を感じることは殆ど無いが、妄信的な帝国主義はさておき、もっと重厚深淵な思想や哲学の込められた建築物が有ってもよいのではないだらうか。

石原莞爾 満州備忘ノート

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「五・一」と「五・四」は何とかやり過ごしたやうだが、この先も「六・四」や「七・七」や、きっかけはいっぱい控えてゐる。でも今回二度目になった町村・李会談、噛み合はない意見の言ひ合いで或る意味妙だが気心が知れたのだらうか、両者とも、とりわけ李氏の表情がうんと軟らかくなったことに気付いた。こんな調子で、日中韓三者で気が済むまで会談バトルやってみれば? そーねー、会場は廬山か長白山頂上か、太陽島か竹島あたりはどうかしらむ??
それにしても六カ国協議の議長国としての役割さへ手に余す様相の中国、ここ5年の凋落は余りにも著しく、憐憫の情抱かざるを得ないほど。内部崩壊も近い??? 
そんなうちにも青蔵鉄路が着々と完成に向かってゐるの報道。鉄路がラサに至らぬうちに、西藏再訪を果たさねばなるまいぞなるまいぞ。
(-_-)