英雄本色

英雄的?

アレキサンダーの人生。時間を駆け抜け、世界を駆け抜けし者。
言ふまでもなく、歴史の再現ほど難しいものはないが、「ロード・オブ・ザ・リング」「HERO」以後にも拘はらず、なほも果敢に大規模戦闘シーンに取り組んだオリバー・ストーンに、先づ敬意を表しやう。更に、先年の「トロイ」公開後にも拘はらず、斯くの如き時代絵巻に挑戦しやうとする熱意は、何処から来るのかな。監督個人の執心にせよ、たとへ何百億もの資金が提供されやうとも、映画てうはそれだけで出来るものではないし、正気と狂気のなせる技に違ひ無い。
骨太のアイリッシュであるコリン・ファレルを初めて見たのは、「マイノリティ・リポート」だったけど、「フォーン・ブース」が低予算駄作だったこともあって冴へないイメージが優先していた。その後の活躍は知らなかったけど、今回は監督によって十二分に才能を引き出されたやうで、英雄の哀しさを満身で演じる様子に好感を持った。アメリカで公開に際し問題になった、ジャレッド・レトらとのラブシーンも、コリン君のあまりに自然な演技?に、不快さも何ら感じなかった。アンジェリーナ・ジョリーの妖艶さは抜群だったし、アンソニー・ホプキンスアテネの学堂に入った劇場舞台を意識したやうな演技で別世界。「白いカラス」が楽しみ。ヴァル・キルマーはだうしてもジム・モリソンのイメージが強かったけど、今回は払拭。でも、歳の割には貫禄不足かな。
重厚かつリバーブのたっぷり効いた音楽は、ヴァンゲリス。冒頭の数分で気付いてしまった。数カ所、「ブレードランナー」と同じ音型のフレーズがあったりして、意図的? 
とにかく俳優の吐く科白、コトバのアクセントも英国式・アイリッシュとガイジン式が意図されてゐて面白かったし、バビロンへの凱旋はちょっと大仰過ぎたきらいはあるが、いろんな意味で濃厚な歴史大作であった。
備忘録:偉人と大王との接点=トロイ(チャナッカレ)、ハリカルナッソス、ペルセポリス、タクシラ(ガンダーラ)、カラチ。パキスタン北部チトラルの民はやはりギリシャ人達の末裔?
アレキサンダー (竹書房文庫)