アウタヤの理髪師

このところちょっと尖り気味

バルカン人は耳が命だが、偉人の頭髪もその重要な耳を今将に覆はむとせるほどの伸長になりにければ、突如散髪に至れり。勿論昨今方々に出現したりける短時間安価式の理髪店であり、15分少々で1050円也。一応大まかな注文も聞いてくれるし、自動洗髪機による3分間もなかなか心地よく、年に何度か密かに利用してゐるのだ。
思へば海外でもしばしば理髪店を利用したが、一番丁寧だったのが倫敦(SW4)の床屋だ。それは下町の極めて古典的な店であったが、理髪師登場以前の蒸しタオル式ぶくぶく泡立て式髭剃りは専門の職人が、毛足の長いブラシで肩や方々に落ちた毛を払い取ってくれるのは青い上っ張りを着た丁稚のやうなおぢさんが、てう具合に作業が分業化されており、英国式階級社会を忠実に反映してゐた。値段は確か7ポンドほどだったと記憶。堂々40分近い時代錯誤的時間体験だったが、最後にヒゲそりあとにペチペチと塗ってくれたオールドスパイスみたいな強力なローションがいつまでもヒリヒリして、ちょっと辛かった思ひ出有り。
一方上海(五角場)の床屋は椅子に座るやいなや勝手に散髪が始まり、二言三言注文を付けてみたものの全く無駄な抵抗であった。当然自動的に刈り上げの爽やか短髪野郎になってしまったワケだ。約20分で料金は5元ほど。100円くらいだから安いも高いも論ずるに及ばざる値段なり。
その他としては、香港(上環)での事件が奇妙さで群を抜いてゐる。友人と一緒に連れ散髪にでかけたのだが、比較的短かった我輩は普通話の出来る爺さん理髪師と会話しながら難なく15分ほどで終了。ところが友人はかなり長髪だったことや、かなりの剛毛だったこともあり、待てども一向に終わる気配が無い。おまけに彼を担当したおじさんは異様に不機嫌で、早口小声の広東話でぶつぶつ言ひ乍ら切り続けてゐたのだが、20分を過ぎた頃から怒り出し、挙げ句の果てには大声を出して身振り手振りをまじへ「こんなに硬くてぎょ〜さんの毛は切れねーでげす!」みたいなことを言ってゐる様子。結局「毛の量が多い」てう理由で料金2倍案が提示され、仕方なく妥協を余儀なくされて事なきを得た(事すでに有った?)ワケだった。もし料金が髪の毛の量に比例して上がるとなれば、さふでも良いのだけれども、かなりややこしや料金制度となるであらうな。
この他にも巴里やイスタンブールホーチミンなどでの理髪体験が有るが、それぞれ非常に個性的であり、その国の国民性や風俗習慣を色濃く反映してゐて、研究に値する分野であるな、とぞ思ひたりける。
しかし改めて断っておくが、今回の偉人の散髪は、北朝鮮の所謂「長髪的堕落反革命分子非難糾弾作戦」に呼応したものではない!
(-_-)
冬にしてはかなりの雨量、外は雪にあらずむば雨しきり。。。