ほどほどにせよ!

モスで楽しくお食事しました

車に乗ってゐて文句を言ふのはそもそも誠に不遜なことであると云はざるをえないが、半島から半島への陸上移動に往復5時間もの運転を余儀なくされるてうことは、由々しきことである。往路は祝日で遊園地に繰り出した人々の渋滞にはまり込み、途中30分以上のろのろ運転。しかしそこを通らねば目的地に行けないワケだから、まあそれはよろしい。問題は、帰路に起こった小さな出来事だ。
国道から田舎道へ出るショートカットを通行中、途中に感応式の信号機が設置された交差点があった。我輩の前に1台の軽自動車が停まっており、2台で信号待ちをしてゐた。我輩はFM放送NHKシンフォニーコンサートのライブ放送で、ブラームス交響曲第1番(W.サバリッシュ指揮)を聴いてゐたので、信号待ちの時間のことなどさほど気にならなかったワケだが(第3楽章演奏中)、ふと気付くと余りにも赤信号が長い。時々通る道なので、感応式の信号であることはわかってゐたが、改めてよくよく見ると、前の白い軽自動車の停車位置が右折を意識して右に寄りすぎており、どうやらセンサーにかかっていないやうなのだ。勿論車幅範疇なので本来反応すべきなのであらうが、センサーの汚れか何かタイミングの問題だったのか、反応しなかったやうだ。見れば運転手は若いお姉ちゃんらしく、そんなことに全く気付く様子も気配も見られない為、ちょこっと車を動かしてみるやうにてうことを進言するために出て行ったのだ。運転席側の窓を軽くノックしてやると、お姉ちゃんびっくりしてこっちを見た。窓を開ける様子も無いので、上空を指さしたり、も少し前か横へ寄せてみしょ、と身振り手振りで伝へやうとし始めた途端、「きゃ〜〜〜〜〜〜、きゃ======!!!」などと突然車内で叫び始めるではないか。一瞬我輩も煙に巻かれて意味不明症候群に陥ったものの、さふか、我輩を物盗りかそれとも因縁を付けに来たか何かと間違へられたと思ひ、「違う違う」と掌を横に振るとなぜか火に油を注ぐ結果に成り、更に物凄い勢いで「ぎや〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、キャー〜*@++=〜¥?!」などと叫び始め、ムンク的パニック状態になってしまったのだ。その様子はメリケンの三流恐怖映画かスティーブン・キングの作品世界に入り込んでしまったものか、はたまたカミュの不条理故事の如き状況であり、余りの様子にこちらが恐ろしくなるほどの勢いであった。
「いったい何がどうしたてうのだ!?」
例へばだ、我輩の風貌が坊主頭でサングラスに口ひげ、破れたTシャツから桜吹雪の入れ墨が入った肩が見へ隠れする状態であったとすれば、勘違ひされたとも考へられるのでその叫び方は許してやらう。ごくごく平凡な、巣鴨のマルジで購入した龍の絵と龍の文字が入ったトレーナーにカーゴパンツ、黒縁メガネの奥にはキラリと光る偉人特有の瞳、てう風貌で、かつ極めて紳士的態度で、独自に編み出した手話的仕草を用ひての要件伝達に、一体何の落ち度が有ったてうのか???
さふかふしてゐるうちに信号も変はったが、彼女の方はお話しにならん状況と判断した我輩は踵を返して車に戻り、ちょっとバックして、通りすがりに軽くクラクションを鳴らしてやったが、その時には彼女は助手席のシートに伏せてしまったやうで姿が見えなかった。勘違いされたにしては印度人より反応が大袈裟であり不可解だし、もし彼女がパニック症候群であるとすれば、さういふ人が路上を運転してゐるてうことは恐ろしひことだ。
この一件で何やらぐったり疲れてしまったので、巨大銭湯に立ち寄って体が溶けるまでお湯につかって帰りましたとさ・・・
(-_-)トホホ・・・