”M”の運命と”Ｂ”の系譜

　
　

　
　

　
「NHK音楽祭2010　ハイライト」　教育テレビ（5.1chサラウンド）
パーヴォ・ヤルヴィ指揮 / ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団によるベートーベン作曲　交響曲　第5番ハ短調　作品67俗称「運命」の演奏に溜飲の下がる思ひ。我が御幼少の砌より長年重厚長大且つ比較的緩慢な演奏を此の曲の標準として脳裏に描き続けてきたが、どこかしら腑に落ちず咀嚼に障る部分があったのも確かなこと。しかしそれが、今夜の演奏を聴いて氷解した。明瞭にして快活、いみじくもゲストの緒川たまきが「せっかちな演奏」と称したが、敢へてピリオド奏法にこだわらずとも、此の人の指揮の下では斯くの如き音の風景（音場）が創造可能なのだな。寧ろ二番手で表れたズービン・メータ指揮 / イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団によるベートーベン作曲　交響曲第6番ヘ長調　作品68俗称「田園」は、超大人数による参戦で緊張感を欠いた老獪さが味なのだらうが、ちょっと黴臭い「田園」であった。
後半戦はアンドレ・プレヴィン指揮 / NHK交響楽団によるブラームス作曲　交響曲第3番ヘ長調　作品90と、ニコラウス・アーノンクール指揮 / ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスによるバッハ作曲　ミサ曲ロ短調　から抜粋であり、明天の寝不足覚悟の上、午前二時十分までテレビ画面に没入することにしやう。
　