朦朧体的網様体

　　
　

　
　

　
　

　
よくわからないのだが、例えば県営名古屋空港から全日空が全面撤退するのはまったく許容できないといって、知事だか地元関係者が署名を持って全日空本社や関係機関に陳情に訪れる様子。
赤字続きで国税を注入してまでも、一部利用者や税収をあてにする関係自治体に便宜を図る必要があるのだらうか。
民間企業なら一向に回復せぬ赤字路線から撤退するのが普通のことで、経営の怠慢や時代の趨勢が作用した結果の結論なら、素直に受容すべきと思ふが。
同根の問題。
偉人も年に何度かは利用する愛知県の伊良湖岬と三重県の鳥羽を結ぶフェリー航路。運営会社が今年9月いっぱいで航路廃止を発表した途端、両県の関係自治体から廃止反対の声明が上がり、各地で集められた何万人分もの署名を添えた嘆願書が関係会社その他に提出されてゐた。
此の場合は航路が廃止されて仕舞ふと其処を補ふ代替案（路線）が用意されてゐるワケではないので、我輩も含めて大なり小なり不便を余儀なくされることは確かだが。
それにしてもいずれも政治家たちや各種役員たちが如何にも利用者の代表のやうな感じで立ち現れてくるのも妙な話だと思ふが、議員だの役員だの、更には趣旨に賛同して署名した人々こそ、先づ積極的に飛行機やフェリーを利用すべきと思ふが如何。
いかにも其の場限りの、報道機関向けの困り顔または顰めっ面して、会議室であーだかうだと喋ってゐる時間があるなら、議員こぞって「天から御札が降ってきた」とでも嘘をついて、ええじゃないかと唄い踊り乍らフェリーを利用してお伊勢参りにでも行ってくるがよい。
ここらへんが小役人や半ば特権化した議員たちの気に入らぬところで、自分たちが正義の代表であり世間の常識基準であり、人民や民間会社は我々の指導に従って当然であるてう尊大な態度が鼻持ちならぬ。
もし彼らがお伊勢さんへ集団出張したとしても、どうせ其の旅費は政務調査費か何かから出るのだらうから、自腹を切らずとも航路存続に貢献できたりするのだよ、諸君。
もっと世間を知り給へよ。そしてもっと、謙虚であり給へよ。
　

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「おかげまいり」と「ええじゃないか」 (1968年) (岩波新書)