正月十四日 丑三つ時の暗闇神事

 
午前2時の境内はまだ無人 雨激しく降りたりける
 
 

静寂の儺追殿(留守番役が隅で仮眠中)
 
 

昨天のはだか祭りで使はれたなおい笹の残骸
 
 

なおいきれの堆積 一年分の厄災の集合
 
 

神男は既に意識朦朧とした状態で介助人無くては身を起こせぬやうな様子
 
 

午前三時半 神職が入場し廳舎での神事開始
 
 

二本の松明に導かれて神男来臨
 
 

粛々と進められる神事
 
 

松明の灯りが陰翳を深める
 
 

和紙に包まれ神男に投げつけられた桃の木の礫
決して踏んではならないし素手で拾い上げることなどもってのほか
神男に託したはずの厄災まで拾って仕舞ふことになる
 
 

箸で拾い集められた礫をこもにくるんで燃やし灰にする
元来撮影はおろか見ることも罷り成らぬ秘儀
 
 

神饌奉還
 
 

はだか男たちの痕跡
 
 

 
 

 
 
全ての神事が終了し、夜明けの気配が漂ひ始める頃、雨は上がった。
 
 
夜儺追ひ神事(よなおひしんじ):午前三時に庁舎にて齋行される神事で、なおい神事の本義であり、最も神聖視されるもの。
儺追人(なおいにん=神男)に、天下の厄災を全て搗き込んだとされる土餅を背負はせ、御神宝の大鳴鈴(おほなるすず)や桃と柳の小枝で作られた礫(つぶて)を投げつけ、境外へ追ひ出す。追ひ出された儺追人(神男)は、家路につく途中で土餅を捨てるが、この土餅を神職の手によって地中に埋納することで、世に生じた罪穢悪鬼を土中に還し国土の平安を現出させる。
 
 


 
 

家に戻ると、屋敷林の椿の大輪が地上に落下していた。