遷移


  
嘗て此の森は何度も禿げ山となり
遷移の果ての極相林で覆はれた過去もあった
そしてまた
人間様の横暴に因って樹木は伐採され
山体の地肌が晒されやうとしてゐる
此の小さき山ひとつさへ
人間様には造れるあては無いはずなのだけど
削平することに長けた人々に因って
あれよあれよと此の有り様だ
しかし植物たちは想像以上に強かで
無数の切り株は月の満ちるを待たずして株立ちの萌芽をみせ
竹の芽も意外な遠くから地上に切っ先を突出し
天を刺す
そして無数の昆虫たちも
瞬時に環境に適応し飛び回り歩き回る
やがて此の森は
人知れず姿を消して仕舞ふだらうが
森の跡に出現する新たな道の行く先は不明のままだ
道に迷ふのはなにも人間様ばかりではないが
其の道の多くを造ったのも人間様だ
風水を観ぜよ
地理に従へ
自然に併呑されて仕舞へ
素直に抱かれよ
そして眠れ
眠れ
永劫に安堵せよ