玉虫と夏の欠片


   
夏の大きな欠片
遠く近く
白い雲と黒い雲のざわめき
アブラゼミの鳴き声と風の流れ
水面を忙しげに行き交ふトンボたち
それでも夕方にはヒグラシと虫の声
秋を迎へ何かが動き始めた感触を得る
或る人間の成長と進化
言語の多様化と文字の神秘
官能の充実と成熟
そしてそれを見守る役目
同時に複数の時間の流れを俯瞰してゐる
人間は時間の中に浮きつ沈みつ
我が身の居場所を探り続け
終の棲家を求め彷徨ふ
夏の欠片を拾い集める人生もまた
一興哉