偉大なる何かと尊大なる何か

ちなみに豚肉はメリケン産

ありとあらゆる意味に於いて「中国は凄い」と思ふことが多い。
自ら求めて、また、縁あって何度も何度も中国にでかけ、既に其の回数は20近くにまで達したのだが、先般の Free Tibet 運動への同調てうこともあって、今後は入国も多少は難しくなるだらうし、今更尊大な中華主義に媚び諂ひ何らかの恩恵を得やうとも思はないので、積極的な訪問はしない。
ただ、悔しいがチベット入国の機会は今後も狙ひ続けるだらうから、中華人民共和国の査証を取得する必要が有り、想像しただけで忸怩たる思ひに囚はれて仕舞ふ。
ちなみに、三度目のチベット訪問の目的は既に決まってゐて、マナサロワール湖岸で採集してきた石器の返還(実物または実測図かのいずれか)と周辺遺跡の探査。カン・リンポチェ(カイラス)のコルラ。そしてロカはツェタンの谷を遡ったチョンギェに存在する王墓群の踏査・・・
但し、絶対に侵略鉄路には乗らない。初回がネパールから、前回が雲南からだったので、次回は四川からのルートで挑戦したいのだが・・・
   

さて、ちょっと古いNEWSだが中国の奥深さを改めて確認することが出来る新聞報道をみつけたので、改めてここに引用しておかう。
  

   
腐った肉に生徒数千人抗議 中国・広東省の高校食堂
2009.1.29 13:57(産経ニュース)

  
29日付の香港紙、明報によると、中国広東省茂名市の高校で今月中旬、校内食堂で使用された豚肉が腐っていたことに抗議し、生徒ら数千人がデモを行った。興奮した生徒らは爆竹を鳴らしたり、食堂にある売店の棚を壊すなどした。
生徒らが17日、食堂の職員に対し、料理に入っている豚肉から腐臭がすると追及。職員が「あなたたちは既に1カ月間、腐った肉を食べている」と認めたため、怒った生徒らが「健康を返せ」「人権を取り戻そう」などと叫んだ。
さらに18日にも、多数の生徒が食堂に集まり抗議活動を展開。学校側が改善を約束し、ようやく事態が収拾したという。(共同)
  

   
さて、事件が起こったのが食都である広東地方であるてうことを考へると、高校生とはいへ当事者達にとって見れば極めて深刻な問題だったのだらう。(でも、此の一ヶ月間誰も気付かなかった?)
生徒らが爆竹を鳴らし乍ら暴れまくってゐる様子は、ともすれば過激な祭りにも見へないことはなかっただらうが、我が邦の事件パターンなら当事者責任者などが会見場にずらりと並び、報道陣とカメラ群に向かって頭を下げて終はりになるのがオチちだらう。
しかし、中国の底知れぬ恐ろしさは食堂職員の科白に全て集約されてゐる。
曰く、
「実はお前さんたちは既にこの1カ月間、腐った肉を食べてゐたのだ!」
とぞ。
恐ろしい威力を持ったまさにメガトン級の爆弾発言である。
  

此の場合、抗議活動を起こした生徒達には絶対の理が有るワケだが(抗議有理)、シュプレヒコールの文言が「加油中国」でも「造反有理」でも「韋編三絶」でも「神社仏閣」でも「破卵板上」でも「焼肉定食」でもなく、「人権を取り戻さう」であったことが妙に生々しい。
即ち、彼らにとって新鮮な豚肉を食べることは基本的人権の重要な一部であり、腐った豚肉を食べさせられることは人権侵害であると言ふのである。このあたりは極めて中国人的な発想なのかもしれないが・・・
確かに、食文化は民族の基本的な行為の積み重なりの上に出現するものであり、それらを守ることは基本的人権の保障と関係があるのかもしれない。
それでは、チベット人達のやうに、文字や言語や習慣や信仰を奪はれつつある状況は、人権侵害には当たらないのだらうか?
まあ、そもそも「食」てう基本的な生存本能に由来する行為と民族問題を絡めて論じることは所詮無理があることなど承知してゐるが、何かにつけて激しく反応する此の民族的特徴を知っておく上で、たいへん興味深い事件例であったことは確かなことだ。
  
勿論、今宵の晩餉は豚肉をたっぷり使った回鍋肉に決定!
   
   
   

こちらは或る日の朝食にて候