魚介類のいずくんぞ心を持たざるやよや

今天の黄昏

今天快晴、天長節
  
「魚貝類」と書くべきか「魚介類」と書くべきか、一瞬迷ひもあったが、水産物の総称てう意味では「魚介」が正しいやうだ。
「介」の意味を調べてみると、中国古代の陰陽五行説に基づく動物分類の用語で、本来は亀・甲殻類・貝類などの甲羅や殻を持つ動物の総称とある。
  
それで改めて、白川博士の『字統』を繙いてみると、
   

  
 カイ よろい・たすける・へだてる
象形:身の前後によろいをつけた人の形。介は介冑を本義とするもので、甲羅をもつ虫類を介虫・魚介のようにいう。
  

  
などとある。
辞典的には、水産物の総称なれど鯨やウミガメなどの四肢動物は含めずとある。鯨などは分類上哺乳類なので例外扱ひなのは納得できるが、ウミガメは原義である甲羅を持つ動物の代表なのだが、一般に食料とはしないことから除外されたのだらうか?
但し、水産物となると湖沼河川などの淡水産のものも含まれるワケだが、海産物と書けば勿論「海物=ヘムル」なワケで・・・
   
余計な蘊蓄はさておき、昨天常世の潮溜まりで拾ってきた*1貝類を調理。
一晩疑似海水に沈めておいたのだが、タイラギもヰガヒ(ムール貝の親戚)もオニアサリも生きてゐる様子。
先づは一番大きなタイラギから。大きいといっても、此の辺りのタイラギにしては中くらいの大きさで、貝殻も割れてゐる。カキのやうに包丁が差し込みにくいわけでもなく、大凡の勘を頼りに貝柱の位置を特定し、切り離す。さすが巨大で分厚い貝柱が出現し、生命体としての貝の中枢が一体どの部分に存在するのかを確定することも出来ぬまま、他の内臓やヒモの部分と分離手術を施す。貝柱自体も、極めて薄く丈夫な半透明の膜に包まれてゐるので、其れも引き剥がし二枚に下ろす。
勿論刺身で、とも考へたが、潮溜まりに放置され、貝殻が割れてゐたてうこともあるので念のため加熱調理。軽く塩胡椒しバターで焼き、ちょこっと醤油を垂らして食すもまた美味し。
ヰガヒは5個しか拾ってこなかったし、オニアサリは2個しかないので、まあオーソドックスに酒蒸しとして食すべし。
それにしても当地は名だたる良質アサリの産地なるが故か、アサリ掻きの人々はヰガヒなど見向きもせず、ひたすらアサリやアオヤギなどの捕獲に夢中になっておられる様子。
我輩は仏蘭西潜伏中に彼の地のムール貝の美味さに目覚め、村の広場で毎週2度開かれるマルシェではポワソニエのおばばと顔馴染みになるほどムール貝を買ひ続け、森の家の庭にせっせと貝塚を築いてゐたものだ。勿論当時は白ワインを用ひ酒蒸し*2を作ってゐたのだが、ヰガヒの場合はヒゲをしっかり取り去っておかないといけませんね。
   

タイラギを捌くのははじめてのことだが、理科の実験解剖のやうだ。此の巨大な貝柱を見よ!
   

ヰガヒの表面には寄生貝や海草が活着してなかなか賑やかな様相。次回はパエージャにでもせむ。
   

オニアサリは丸々と太った大粒!
   
  

*1:基本的に漁協が管理する潮干狩り場なので、アサリ目的で道具持参の場合は大人一人1500円が徴収され、2キロまで持ち帰ることが出来る様子。我輩は見学者であると申請して入場したので勿論タダだったが、拾う気になればアサリ以外の貝類はいくらでも落ちてゐるので、目立たぬやうに集めて歩けばかなりの収穫が得られる。

*2:ニンニクを効かせたオリーブオイルで炒めたあと、白ワインを加へ蒸し焼きにするのだ。