Anadolu

イロイロな色が支へる天蓋

近年、各種音源や映像軟件の発売を待ちに待つことなど殆ど無かったのだが、久々に「待望」の音源を入手。
きっかけはピーター・バラカン氏のマニアックなFM番組。紹介された一曲に一瞬にして胸を射抜かれ、突発性の肺気胸に罹ったかの如く気虚諾々たる気持ちになって仕舞ったこと。斯くなる上は、音源の入手しか対処法が無いワケで、満を持して TOWER RECORD で購入。
当初、此の種の音源は JAZZ のコーナーに置いてあるものと勝手に思ひ込んで探してゐても見つからず、さうか、カーヌーンだのバーラマ・サズだの民族楽器が使はれてゐるのだから所謂 WORLD MUSIC のところに置いてあるはず、と探してみると果たして、新譜として1枚だけ、棚の上に置いてありました。
   
   

タクシム・トリオ

タクシム・トリオ

   
    
此のアルバムをコトバで紹介することは難しいのだけれども、心の奥底の、どちらかと言ふと遺伝子のステージに近い領域で感応して仕舞ふ類の音色の「流れ」であり、"an atmosphere" とでも言ふべき空間の創出であり、沈黙と官能の世界の音だ。
勿論、アルバムタイトルにあるやうに、イスタンブールは TAKSiM 広場訪問の経験があるに越したことはないが、「トルコ」てう最重要キーワードを除外しても猶、トリオの紡ぎ出す濃厚な「雰囲気」の密度に変化は無い。「ベリーダンスイスタンブール」の流れで聴く時とはまた違った空気の重さや "沈殿" を愉しむ、「大人」のアルバムである。