割られ形作られた石に宿った古代人の意思をどこまで感得できるか


限りない好奇に支へられた根気と執念の賜物
    

そして北の豊饒を如実に物語る黒曜石文物の数々
   

其の形状は余りにも完璧かつ多様であり、内地人の安易な感傷など微塵も寄せ付けない。
それにしてもこれらの文物と不思議な縁で結ばれた西尾氏の研究態度は真摯そのものであり、在野研究者の鑑であると同時に我々の誇りでもある。
   
しかし研究は常に孤独で無限だし、結論はいつも磨り硝子の向かふにあるものだ。
見ゑない結論を嘆くことは簡単だが、そんな暇があるなら何か美味いものを喰って眠ってゐた方が良いのかもしれないし、温泉にでも入ってふやけてゐた方が良いのかもしれない。
そんな怠惰な人生も有りだらうけど、何者かによって結ばれた縁の尊厳を守る人生もまた、大いに「有り」なのだらうね。
いずれにせよ、我輩の到底及ぶ境地ではないし、頭の下がる思ひであることに変はりはありません。
(―_―)