螺旋の世界観

珈琲豆的多重世界

今天は台東区、嘗ての吉原は日本堤方面へ。
言ふまでもなく目的地は珈琲屋バッハなのだけれども、取り敢へず江東区は東砂からバスにて亀戸まで出、日暮里行きに乗り継いで野越ゑ川越ゑ白鬚橋渡り、都合半時間余り。山谷は泪橋にて下車してみれば、まんだ少し時間有る様子だったので、同行の中島氏とともに商店街界隈を浮遊。
勿論自由系労働者及び路上生活者の姿も多い此の地区なのだけど、意外なことにアーケード街の商店は予想以上に多くの店が営業中であった。
どことなく時代錯誤な商品の山や、セルロイドで出来た街灯の花飾りが懐かしさを醸し出してゐるが、此処は紛れもなく現在稼働中の商店街なのだ。
ゆっくりと歩を進めるうち、中島氏が路地の奥に気になる建築物を発見したので出掛けてみると、果たして其れは「廿世紀浴場」と称する何ともレトロな銭湯であった。
外装はスクラッチタイルを使ひ、正面中央に塔屋を抱く其の風貌は何ともモダンで、堂々としてゐる。窓に嵌められた曇り硝子や磨りガラスの細かな細工や、左右の塀に載せられた瑠璃色の瓦(コレは後世のものである可能性も有る)と其の下のローマ風の雷文、銅板の貼られた軒先やアーチ状の窓枠のデザイン等々、昭和初期の風情。兎に角、よくぞ此の平成の世まで残ってゐたものと思ふほどのものであった。
勿論、此処まで凝った設計だと内装も見てみたくなるのが人情と言ふものだらうがやんぬるかな、その玄関にはコンパネが貼られ塞がれ、「管理地」の大きな文字が・・・
近所のおばさまに尋ねてみると、なんと先月までは営業しておったとのことで、去り行き滅び行くものは殊更愛ほしく思はれるものだなあとしみじみ。でも実際、建築学的には大変貴重な建物なのではないのでせうか?
(-_-)保存の話は無し?