ジタンヌ

既に咲きたる庭の睡蓮

ファンファーレ・チォカリーアのアルバム『クイーンズ&キングス 〜ワイルドで行こう』は、迫力満点のジプシーブラス。土俗の風情と国籍不明な雰囲気が混淆した希有な出来具合だ。
彼らがルーマニアのキング・オブ・ジプシーであるてうことを忘れてしまう瞬間が何度もあるが、アクロバティックなブラスバンドのパッセージもさること乍ら、ざらざらした独特で魅力的なジプシー・ヴォイスも素晴らしい。
残念なことに、グループの創始者クラリネット奏者のイオン・イヴァンチャが昨年亡くなってしまったこともあるが、結果的にはルーマニア国内ばかりならず、セルビアハンガリーマケドニア、フランス、ブルガリアなどからもジプシー(ヒターノ=ジタン)音楽家達を招き、イオンへのオマージュ(サラーム海上氏の表現を借りればレクイエム)アルバムとなった。
新生されることに因り、奇しくもジプシーの本質が習合凝縮されてしまったのかもしれないね。
              

クイーンズ&キングス〜ワイルドで行こう

クイーンズ&キングス〜ワイルドで行こう