虚心

空へ!

一方森の中では、シータの略奪されたことを霊鳥ジャターユから知らされた兄弟が驚き悲しみ、直ちにシータの捜索の為に森の中に分け入って行った。
ラーマ兄弟は森の中を彷徨ひ歩くうち、木陰で嘆き悲しんでゐる一匹の猿に出会った。
「何故お前はそのやうに嘆ひてゐるのか」とラーマが問ふと、猿の曰く
「実は私は猿の王スグリーヴァと申す者で御座ゐますが、王位を妻と兄猿のヴァーリンに奪はれてしまったのであります」と答へた。

補陀落―観音信仰への旅