憐れむべきは

不安色の空

不安色の雲が空を覆ひ 列車は行く先に到着しなかった
圧縮され歪んだ空間に 人々の喜びや悲しみは閉ざされ
さまざまなものごとが 唐突に途絶へる
全ての人の運命が 恰も1点に集束されむが為 何者かに突き動かされて来たかの如く
収斂して行く
宇宙の如し
そしてまた 異国の空で
バスは目的地に到着しなかったのだね
人の世の悲しみよ
運命に弄ばれる 儚き魂を
人々は激しく憐れむべし
不安色の空から降るは 春の夜を覆ひ隠す小糠雨
今宵はただ 合掌ありき哉

モーツァルト:レクイエム

モーツァルト:レクイエム